法律のいろは

離婚と財産分与(その⑧)

2013年5月6日 更新 

 財産分与の話のうち,退職金について2回話をしてきました。今回もその続きです。

 前回までの退職金の話は,定年退職まで10年以上は期間のある方を念頭に置いていました。今回は,既に定年退職をしている方やあと数年で定年退職の場合,いわゆる熟年離婚の場合について,触れていきたいと思います。

 いわゆる熟年離婚であれば,公的年金を含め年金収入はどうなるのだとか・退職金があればそのお金を生活の糧にしていくことを考えておられるのが普通であると思われます。このうち,年金関係はいずれ年金分割の話などで触れたいと思います。また,退職金を企業年金方式で給付している場合には,退職金(一時金)と基本的には同じように考えることになります。

 既に定年退職をしていて,お金を受け取っている場合やこれから年金方式でお金を受け取る場合についてです。この場合,年金や一時金の原資となるお金は定年退職時に確定していることが多いと思われます。ですから,確定していれば

 確定した金額×婚姻期間/勤務年数 

 ということで財産分与すべき金額が計算できます。年金方式で少しずつこれから受け取っていく場合でも異なりません。

 次に,あと数年で定年退職をする場合はどうでしょうか?この場合でも定年退職まで実際に努めるかどうかは分からないのではないかというきがするところですね。たしかにそういった要素はあります。そうはいっても,この場合は,定年まで勤める可能性が大きくなり,定年退職時の退職金も算定できる場合があります。

 そのため,数年後に定年退職する可能性が高く,その際の退職金が計算できるのであれば,その金額を財産分与の対象とする例が増えてきます。実際,このような考えを取る裁判例もあります。あくまで,定年退職時の退職金が発生する可能性が高いということですね。

 もちろん,現在のお金の価値と数年後のお金の価値は違うので,現在のお金の価値に引き直して計算する必要は原則するべきと思われます。

 この場合の財産分与すべき金額は,先ほどの計算式と基本的には同じ考え方をすることになります。もちろん,現在までの勤務期間のうち,結婚していた期間に対応する額が財産分与の対象です。

 ちなみに,こうしたケースで実際には定年退職まで貢献するわけではないから,二分の一で清算するのはおかしいという考えもあるところです。ただし,定年退職までの金額を現在の価値に引き直していることから,この金額について,原則として二分の一の貢献による清算をするということになります。

 このように,退職金を巡る問題は,非常に煩雑なものです。細かい点を挙げればまだ色々ありますが,とりあえずここまでといたします。

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