法律のいろは

スムーズな相続にするには?その⑤(~遺言書作成にあたり気を付けるべき点(3))

2013年6月27日 更新 

 前回、前々回とで遺言書作成にあたり、大きくわけて二つの方法(公正証書遺言・自筆証書遺言)があること、それぞれの特徴、長所・短所などをお話ししました。

 

 遺言は、作成をした人が亡くなったあとに法律上の効力が生じるので、形式面で問題があっても、作成者本人には確認できません。そのため、要件が厳しく決まっているのです。

 今日は、このうち特に有効になるための要件が厳しく定められている、自筆証書遺言についてもう少し詳しく、形式面で気を付けるべきことをお話ししたいと思います。今回は、実際に自筆証書遺言を作る上で、疑問が生じそうなところをQ&A方式で触れてみたいと思います。

 

Q1:全文を自分で書かなければならないとのことですが、自分でパソコンを使って作った場合もダメなのですか?

  最近は割と年配の方でもパソコンを使う方が増えてきていますね。

  とはいえ、自分でパソコンにより作成をしたとしても、遺言書本文は「全文」を「自書」したといえないのでダメです。自筆証書遺言で全文・日付・氏名をすべて自書することが求められているのは、遺言の作成者の真意を明らかにして、偽造・変造を防ぐためです。なので、パソコンで遺言書を作成した場合、本当に遺言書を残そうとする人が作成したか確認困難である上、後で付け加えたり、変更されているかわからないからです。

  同じく、ビデオなどで音声・画像を録画・録音したとしても、「自書」でないので要件を充たしません。前に触れましたが、普  段タイプライターで書面を作成している外国人が、タイプライターで作成した遺言書を有効としたケースがありますが、かなり特殊です。

  ビデオ撮影は、あくまでも自書した遺言書があって、その作成が適正になされたかどうかを検証するための、フォロー的なものととらえた方がよいでしょう。

 

  現在は法律改正により自分で書かないといけない部分が一部緩和されました。これは,遺産の目録を遺言書につける場合に,その目録部分は手書きでなくてもパソコンで打ったもので構わないというものです。あくまでも目録のみである点に注意が必要です。つまり,遺言書本文は自筆で手書き記載をする必要があり,ここに例えば遺言書本文に財産内容が記載されていて,財産内容のみパソコンでうっていてその他が手書きというのは自筆でないため無効となります。

  あくまでも財産目録部分を金融機関の名前や口座番号・支店名,不動産は地番などをパソコンで打って作成するという方法や不動産登記事項証明書や預金通帳コピーを使っての方法など,財産目録部分だけが自筆でなくてもよいとされている点に注意が必要です。ちなみに,この方法を使うならば遺言書本文と財産目録部分は分ける必要があり,財産目録部分には各ページに自筆での署名と押印が必要になります。財産目録のページが複数ページになる場合が要注意で,すべてのページに自筆署名と押印がないと結局無効な遺言となります。1ページだけでいいわけではありません。また,すべてのページに自筆署名と押印があれば,いわゆる割り印や契印は不要ですし,遺言書本文と財産目録で押されている印鑑は別の印鑑でもいいとされています。ただ,偽造その他の話を防ぐなら可能な限り同じ印鑑でかつご自身が普段使っている印鑑での作成がトラブル防止のためにはいいと思われます。

 

Q2:遺言書の全文を6月1日に書きましたが、疲れてしまったので1週間後に残りの部分を書くことにしました。 いつの日付を書けばいいでしょうか?

   遺言書の全部を自書した日付を書くのが原則ですので、何日かかけて書いた場合、書き終わった日付を書くことになります。ですので、上の場合ですと日付は6月8日と書くのがよいでしょう。

   ただ、裁判所での判断では、遺言書の全部を自書した日と別の日付を書いた場合でも、有効としているものも見られます。実 際に全文を自書し終わった日とあまりにも期間があいた日付を書くと無効になる可能性もありますが、そこまで厳密ではないようです。

   日付を書かなければならないとされているのは、遺言書を作成したときに、作成者がきちんと物事が分かった上で作成したかどうか、あるいは遺言書が複数あるとき、そのどれが有効かを判断するにあたって必要になるからです。

   いつ遺言書を作成したか明確であれば、日付がいつかはさほど問題にならないような気はします。ただ、シビアに遺言書の効力が争われるようになると、いつその遺言書が作られたのかが大きな問題になる可能性があります。ですので、出来れば一日で遺言書全部を作成するようにしたいものです。

 

   次回も、もう少し自筆証書遺言の形式面についてお話ししたいと思います。

 

 

 

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